「こないだは、おいしー“もんぶらん”をありがとうでしたvv」
カンナ村からのお友達、久蔵も大好きなキュウゾウお兄ちゃんが、
先日御馳走になったおやつのお礼だと、
小さな背中に背負った籠でもって、ごっそりと持って来てくれたのが、
「うぁあ、これってカンナ村のさつまいもですよねvv」
「うん、そうだよvv」
「みゃっみゃvv」
生のままだと丁度いいおもちゃに見えるらしい久蔵はともかく、
料理自慢のお主まで。
何をそうまで、声を裏返してまで感動しておるのだと、
勘兵衛が七郎次の興奮ぶりへ怪訝そうな顔でいると。
「あ、勘兵衛様。芋なんてどれも同じだと思っておいででしょ。」
「にゃあみゅっ。」
仔猫の坊やからまで、非難めいた声を上げられてしまっており。
「いや…ジャガ芋や里芋とは違うのだろうが。」
「あまいっ!」
勘兵衛様は骨太な活劇ばかり書いておいでだから、
そこまで御存知ないかも知れませんが、
サツマイモはこれで奥が深いのですよと。
今日はきゅうと束ねた金の髪、
窓からの陽に
タマネギのつややかさを想起させるほど きらつやと輝かせて、
七郎次がびしぃと指摘をし。
「例えば、ほくほくと少々乾いた質感に焼き上がる種もあれば、
裏ごししたかのようにクリーミィなそれへ変化するものもある。
甘さだって千差万別で、
ほんのりと塩を利かせて丁度いい、芋らしき風味となるものもあれば、
りんごのように蜜が出て、
そのままスイートポテトと変わらぬほどの甘さに
焼ける種もあるのです。」
「………ほ、ほほお、さようか。」
あんまり甘いもの自体が得意ではない勘兵衛なので、
知らなかったとてしょうがなかろうに。
一旦丁寧に洗われたのだろう、赤紫の皮の色も麗しい、
肥え具合も充実していて、見た目以上にずんと重たげな、
流線形のお芋たちを両手に何本か抱えると、
「特に、こちらのカンナ村のお芋は、
しっとりした感触も甘さも絶品で。」
百聞は一見に如かずですと、
今から石焼き鍋で調理にかかるか、
キッチンまで伸した辣腕秘書殿を見送り、
「…今の七郎次、ちょみっと“おにのふくかん”の顔だったね。」
「みゅあにゅう。」
仔猫たちが感慨深げに頷き合っていたのへと、
「……それはもしかして、
たいそう怒っている折のことを言うのかな?」
怖々と訊いた勘兵衛様だったら笑えるんじゃないかなとか、
どこかから届いた焚き火の匂いに、
ふと思ってしまった小話でございましたvv
~Fine~ 2010.10.17.
めるふぉvv 


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